深い山々に囲まれて
身も心も癒される
秘湯で知る湯治の魅力

温泉の効能でケガや病気の療養を行う「湯治」。
ここ長野県にも、伝統ある湯治場として名高い二つの温泉があります。
身体だけでなく心もリラックスできる温泉は、忙しい現代人にもおすすめです。

更新日:2020/08/06

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湯治の文化

長野県には古くから多くの温泉地があります。諏訪では温泉に浸かった土器が発見されていることから、縄文人も温泉を利用していたのではといわれています。清少納言の『枕草子』には、上田市にある別所温泉(当時は七久里の湯とも)が登場するなど、各地の温泉地の歴史は古く由緒あるところが多いものです。
湯治が庶民の間でも盛んになったのは江戸時代中期以降のこと。農閑期になると多くの人が温泉地に向かいました。かつては農業などを営みながら湯宿を経営するところがほとんどで、夏の間は養蚕のための桑摘など、農作業を手伝うと料金が割り引かれることもあったそう。
大正、昭和になると、温泉地は1週間、2週間と滞在する湯治の形から一転、歓楽街として発展するところが増えていきました。そんななかでも、いまだ湯治の風情を残す温泉地が長野県にはあります。

山あいに立つ中房温泉。木造の歴史を感じさせる建物がまさに湯治の風情

文殊菩薩のお告げがあった
鹿教湯(かけゆ)温泉

上田市と松本市を結ぶ山間に位置する鹿教湯(かけゆ)温泉は、内村川の清流が流れる静かな温泉地です。山に囲まれた湯の里にはゆっくりとした時間が流れ、古くから湯治場として多くの人を癒してきたことも納得です。
「鹿が教えた湯」の伝説がある鹿教湯温泉。言い伝えによれば、昔、信仰心の厚い猟師が山奥で鹿を見つけて矢を命中させたものの逃げられてしまい、翌日もう一度山へ探しに行ったところ、矢が刺さったままの鹿が気持ちよさそうに水浴びしている姿を見つけたそう。とどめを刺そうと近づくと、けがをしていたはずの鹿が元気に走り去っていったのでした。不思議に思ってその水に手を入れてみると、それはこんこんと湧き出る湯。そこへ文殊菩薩が現れて「この湯を広く世に知らしめよ」とお告げをし、以来、「この湯に浸かって病気やケガを治すとよい」と伝えられてきたといわれています。古文書によると元禄時代から湯治客が訪れていたようで、高島藩の姫や沼田藩の代官などの入湯記録も残っています。温泉街に立つ文殊菩薩を祀る文殊堂は、今も湯治客から厚い信仰を受けています。

旧源泉地にある共同浴場「文殊の湯」。5つの源泉からわき出る高温の湯を混合し、湯もみした状態の湯が肌にやさしい温泉です

リハビリ施設がある
昔ながらの療養地

鹿教湯温泉のお湯といえばぬる湯の長湯。ゆっくりと浸かることでさらに身体の芯から温まり、高血圧症などに効果があるとされています。神経痛やリュウマチにもよく、足腰の疲れが取れるので「回復の湯」ともいわれ、多くの湯治客に愛されてきました。
1956年には全国でも数少ない環境庁指定の「国民保養温泉地」になってから温泉街として有名になり、同じ年には医療機関として県厚生連の療養所ができました。温泉と一体になって心身を癒すこの病院は1975年に「リハビリテーションセンター鹿教湯病院」に名称を変え、全国的にも優れたリハビリ拠点として注目されています。
かつては療養のために訪れ、1ヵ月ほど滞在する人も多かったそう。長期滞在の人は減ったとはいえ、それでも今も1週間から10日ほど過ごす人も多く、古くからの湯治場ならではの魅力を感じます。
現在は20軒の旅館が軒を連ね、共同浴場も2つあるので湯巡りを楽しめます。 なかでも「つるや旅館」は、湯治客のために食事や料金を変更してくれるほか、宿の温泉療養指導士のアドバイスで適切な湯治が体験できる宿。「渓流露天の宿 河鹿荘」には自炊施設を完備する別館があり、長期滞在の湯治客にはうれしい宿です。

鹿教湯内の〝町(まち) 〟地区にある「まちの共同浴場」。
朝7時から夜9時まで利用でき、おもに地元の方が多いアットホームな雰囲気

17種類の湯を楽しめる
山深き秘湯・中房温泉

まさに湯治場というべき、秘湯と名高い中房温泉は日本アルプスの中腹、燕岳の登山口に位置します。標高は1,462m。山深き谷あいのいで湯が現在のような温泉地になったのは、1821年、この地に入った百瀬茂八郎が生糸に艶を出すのに必要な明礬(ミョウバン)の採取と湯小屋をはじめたのが最初だといわれています。
一帯には古くからさまざまな温泉が点在し、現在は露天と室内風呂を含めて17種類ものお湯があり、宿泊するとすべて自由に回ることができます。風呂はすべて源泉掛け流し。野趣あふれる山のなかの露天風呂や松本藩主が好んだとされる湯、さらに地熱のスチームを感じながら外で寝転がる地熱浴場など、すべて異なる雰囲気で、全部回ってみたくなります。なかには混浴の風呂もあり、昔ながらの湯の里の素朴な雰囲気を感じます。登山口にあるため、登山客が多く訪れるのも特徴です。

中房温泉に宿泊すると、広い敷地に点在する露天風呂を巡って
お湯を楽しめます。こちらは「白滝の湯」

中房温泉が取り組む「新・湯治」

明治時代や大正時代の中房温泉の湯治客で多かったのが、やはり農家の人が田植えや稲刈りといった大仕事が終わってから温泉地に疲れを癒しに来る人たち。愛知県からはるばる訪れる人も多かったそう。日常の延長に湯治という文化があったことが伝わってきます。
現在、中房温泉が力を入れているのは、環境省が提唱する「新・湯治」。温泉にくわえて地域の食や文化、アクティビティなどを楽しむことで心身ともにリフレッシュすることを目指すものです。
中房温泉では、温泉に泊まって川でカヤックやツリーイングを楽しんだり、地熱蒸し料理や畳づくりを体験したりと、バラエティ豊かなプランが用意されています。温泉に浸かって雄大な自然を楽しめば、ストレス軽減に役立ちそうです。

もうもうと湯気が立ち上る「地熱浴場」。
地面から湧き出る地熱を全身で味わえるユニークな風呂です。
夜は満点の星空、朝は美しい朝焼けが見えることも

詳細情報はこちら

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